自由民主党の皇位継承案はどうなるか?
京都産業大学名誉教授 所 功
この11月15日、自由民主党が結党70年を迎えた。個人でいえば古稀、古来稀な目出度い節目にあたる。時あたかも近現代史上初めて女性の内閣総理大臣が誕生したことは、まさに画期的な出来事と言えよう。
その高市早苗首相は、公式サイトでも、既に20年近い前の平成18年2月、「私自身は、女性天皇には反対しないが、女系天皇容認と長子優先については、慎重に検討していただきたいし、党内でも議論を深めたい」と述べておられる。
では、自民党内で本当に議論が深まっているのだろうか。マスコミ情報では、皇位継承者を男系男子に限定する明治以来の男尊絶対論が有力と伝えられるが、高市総裁のような巾のある見解も少なくないと仄聞している。
そこで、自民党発足前からの議論を振り返ってみると、昭和29年11月に自由党憲法調査会(会長岸信介)の公表した『日本国憲法改正案要綱』には、「皇室典範を改正し、女子の天皇を認める」「皇男子なき場合は皇女子がこれを継ぐものとする」と明記している(添付資料)。それに当時から賛成の中曽根康弘氏は、平成12年12月初めの記者会見で、「私は前から女帝も認めたらどうかと言っている」と述べ、「国会の憲法調査会で具体的に検討するよう求めた」と報じられている。
それから20年余りいろいろ議論されてきた。しかし、一昨年から政府が国会に検討を求めているのは、肝腎の皇位継承問題を棚上げして<皇族数の確保>に限り、それすら与野党の建設的な合意形成に至っていない。
念のため、私は昨年自費出版した『「皇族の確保」急務所見』に述べた通り、現行典範に定められる「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」との原則は、二代先まで維持可能な現状にあるから、当面変更しなくて良いが、万一に備えて皇族女子の継承も公認しておく必要がある、と考えている。
そもそも皇室には、一般国民のような氏姓も苗字も無いのだから、本質的に男系も女系も無い。ただ、歴史的に皇位継承者は大多数が皇族男子であったから、二代先まで男子優先を原則とし、将来的には男女を問わす長子優先にする、ということも検討する必要がある、と予測している。

