新しい元号の公布と施行の日時(試案)



かんせいPLAZA主筆  所 功

 昨年六月成立の「皇室典範」特別法に基づいて、今上陛下は来年四月末日限りで「退位」され、皇太子殿下が五月一日から新しい天皇となられる。それに伴って、新しい元号が決められ使われることになる。
 この新元号は、「元号法」に基づき、政府が「政令により定める」ことになっている。それが今回は、近代に前例のない〝高齢譲位〟による皇位継承であるため、政令の公布時期と施行時期に新たな工夫を要する。
 そこで、政府としては、国民の便宜を配慮して、来年四月一日までに新元号の内定案を発表し、書式等の切り替えも可能にする方針だと報じられている。これは、新元号がスムーズに使われるためにも、現実的な在り方だと思い、私も昨年来賛意を表明してきた。
 しかしながら、更めて熟慮すると、現行憲法の定める政令は、天皇が国事行為として署名されなければ正式に公布できないと解される。この場合、その天皇は五月一日に皇位を継承される新天皇陛下である。従って、新元号の公布は、「剣璽等承継の儀」直後に、官房長官のもとで、「平成」改元の時と同様の最終手続きを経て、公式に発表されるべきだと考えられる。
 残る問題は、その施行日時である。これが「大正」「昭和」の時は践祚の当日とされた。しかし、それでは開始時間を特定することが難しい。そこで、「平成」の時は、政令公布の翌日(一月八日)初めからとされた(踰日(ゆにち)改元)。だから、これを踏襲するのも一案であろう。
 しかし、昨年来現政府が表明してきたとおり、国民の便宜への配慮も必要なことであろう。とすれば、施行まで適切な間隔を置くことが望ましい。それには、㋑十月二十二日の「即位の礼正殿の儀」当日初めからも一案であろう。もう一つは、㋺翌年(二〇二〇)一月一日初めから(踰年(ゆねん)改元)とされてもよいと考えられる。
 念のため、新天皇の即位当日に新元号を公布した上で、それを数ヶ月後に施行するとしても、一世一元の法意に反することはない。「元号法」にいう「皇位の継承があった場合に限り」とは、新天皇のもとで公式に定められた元号は御在位中に再び改めない、ということであり、翌日の踰日改元も翌年の踰年改元も本質的には変わりない。
 むしろ敢えて申せば、約千二百年前の「弘仁」改元(八一〇)から、約百五十年前の「明治」改元に至るまで、代始の改元は踰年改元こそ重要、と考えられてきた。およそ年単位の暦は、天皇が決められて始まるので、ある年の途中で崩御や譲位をされても、その年は先帝の定められたまま据え置き、年を踰えてから諸手続きを経て改元することが、先帝に敬意を表し孝の誠を尽くすことになる、と考えられたのである。
 ともあれ、今回の改元(公布と施行)は、将来の一先例となるであろう。それゆえ、法理と便宜の両方に叶う在り方が実現されるよう念願している。

(平成三十年七月二十日)

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