皇族女子宮家も養子皇族宮家も実現可能か



皇族女子宮家も養子皇族宮家も実現可能か
(京都産業大学名誉教授) 所  功
「昭和の日」の本日午後、国立日本武道館で「昭和百年記念式典」が簡素に執り行われた。NHKも民法も特番を組まなかったのは遺憾であるが、これを機に、昭和天皇への関心が高まり、理解が深まることを念じてやまない。
現在一般に天皇・皇室といえば、やはり戦前・戦中・戦後を通して国民と苦楽を共にされた昭和天皇の印象が強い。その延長線上に平成を経て令和の今日があり、多くの国民に敬愛されている。
そうであれば、今後とも重要なことは、このような昭和天皇と皇族たちにより形作られてきた皇室の存続を可能にすることであろう。ただ、それが困難な状況まで想定すれば、その周辺におられる血縁の方々も、皇室を支える存在として必要であろう。
このような観点から、いま政府の案に基づき国会で協議されている「皇族数の確保」に関する方策を見直すと、大筋は尤もらしくみえるが、果たして実現することが可能なのか、本当に妥当なのか、かなり疑問に感じられる。
まず、政府案の第一は、皇族女子(皇室で生まれ育たれた内親王・女王)が一般男性と結婚されてからも、新宮家の当主として皇室に留まれるようにするが、その夫や子たちは、一般国民のままに据え置き、皇族の身分にしないという。
しかし、既に再三指摘してきたとおり、そんな皇族女子宮家では、身分の異なる妻と夫と子たちが同居しながら、皇族でない夫と子たちは、生活費を皇族費から受給することができず、たとえば宮家の職員扱いの給料を貰うか、一般国民として自分で稼ぐほかないのではないか。また、その夫は女子当主の公務に同伴しても、たとえば皇族を補佐する宮内庁の職員と同じような扱いにならざるをえない(警備の仕方も問題になろう)。さらに、女子当主が薨去されると、皇族でない夫も子たちも宮家を相続することができないから、一代限りで絶家となってしまう。これでは、新宮家が家族として違和感なく円満に生活し活動することが難しく、皇族数を増加することにつながらない。
ついで、政府案の第二は、昭和二十二年(一九四七)十月に皇族籍を離れた旧宮家(全て伏見宮家系)で、一般国民として生まれ育った男子孫が、養子として宮家に入り皇族となれるようにするのみならず、その養子皇族の男子孫に皇位継承の資格を認めるという。
しかし、これも既に指摘してきたとおり、戦後八十年余り経た今日、旧十一宮家で若い男子孫が実存するのは四家にすぎない。その中に養子皇族となる意思と相応しい品位を備えた適任者がいるのかどうか。また仮にいるとしても、そのような人を皇室の側で養子として迎える意向をもつ宮家があるのかどうか。共に内々確認する必要がある。もし出す側と迎える側の合意がなければ、養子皇族は実現しないであろう。
このように、これから「皇室典範」を改定し二つの案を制度化しても、本当に実現できるかどうか分からない。それにも拘わらず、第二案の成立を強行すれば、現在多くの日本人に親しまれ敬われている近現代皇室の方々とは縁遠い、別系統の皇族を作り増やすことになろう。
万一そうなれば、現在の皇室構成者(その男女子孫)と、新設の養子皇族(その男女子孫)が併存し、一般国民が両家を比較し無責任に優劣を論評するようなことにもなりかねないと危惧される。       (令和八年四月二十九日夕)

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