国会の全体会議は「付帯決議」の再確認から
(京都産業大学名誉教授) 所 功
本日(四月十五日)から衆参両院で「皇族数の確保」に関する全体会議が再開された。四年前に政府が纏めた方策を受け取って「立法府の総意」をとりまとめるため、両院正副議長主催による協議は、一年近く休眠していたが、急に飛び起きて結論を急ぐという。
しかしながら、こんな有様でよいのだろうか。今あらためて考えるべきは、政府案を出すに至った経緯を再確認しながら、少なくとも今後二十年程先まで見据えて、有効性・可能性の高い方策を実現することだと思われる。
その重要なターニング・ポイントは、平成二十九年(二〇一七)六月、天皇陛下(83歳)の〝高齢譲位〟を可能にする「皇室典範特例法」案の採決に先立ち、与野党で合意して政府に託した「付帯決議」である。その第一に次のごとく明記されている。
一、政府は、安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等について、皇族方の御年齢からして、先延ばしすることはできない重要な課題であることに鑑み、本法施行(退位実現)後速やかに、皇族方の御事情等を踏まえ、全体として整合性が取れるよう検討を行い、その結果を速やかに国会に報告すること。
ここには、現在皇室に居られる方々の御年齢を考慮し、早急に取り組むベき課題として、(イ)「安定的な皇位継承を確保する」こと、および(ロ)「女性宮家の創設等」まで具体的に提示されており、真剣な意気込みが感じられる。
ところが、令和に入ってからの政府は、(イ)を二代先まで問題がないと見なして棚上げし、(ロ)も「皇族数の確保」に焦点を絞りながら、新しく(ハ)「旧宮家子孫の養子」皇族化案を加えて、ようやく国会に報告したのである。
従って、それを受け取って国会では、政府が第一に示す(ロ)「女性宮家の創設」を可能にする案を優先し、併せて(ハ)「旧宮家子孫の養子」による皇族化案も吟味してきたはずである。しかし、本当に「全体として整合性が取れるよう検討」したのだろうか。
すでに、再三指摘してきたことながら、いわゆる女性宮家では、皇族女子が一般男性と結婚されると新宮家の当主となり、皇族としての公務を続けられうる。しかし、政府案では、その夫も子も皇族とせず、「一般国民の権利・義務」を保持したままにするという。
これでは、身分の異なる当主と夫子が同居しながら、その夫子には皇族費が支給されず、当主に同伴しても皇族の公務とされない(日常的には生家の名字続用を強制される)、という奇妙なことにならざるをえない。この点は、現に皇族男子と結婚する一般女性が皇族となり、その子たちも皇族として宮家を相続しうるのと同様にすべきである。そうしなければ、皇族数の確保(維持増加)につながらないであろう。
もう一つの、旧宮家子孫が「養子」として皇族となれるようにする案は、いわゆる男系男子を確保する秘策とみなされている。それは果たして具体的に実現しうるか疑問に思われるが、窮余の一策として制度化することは、無意味でないかもしれない。
ただ、当面(少なくとも二十年程)の皇室にとって最も重要なことは、今上陛下(現在66歳)が「象徴天皇としてのお務め」を十分に続けられるようにすることである。そのために、内廷の皇女も宮家の皇族たちも一致協力して補佐できるような形を整えることだと思われる。 (令和八年四月十五日夕)

