(36)天皇皇后両陛下のパラオ慰霊行幸啓



いわゆる戦後七十年の節目にあたり、私ども日本人は何を為すべきか何を為しうるか、各界各層で多様な議論や報道が盛んになりつつある。しかも、それを早くから熟慮され自ら実践してこられたのが、天皇(81)皇后(80)両陛下にほかならない。

百年近い日本とパラオの親交
その一環として、今回(四月八日・九日)日本から南方約3000㎞のパラオ共和国までお出ましになられた。そして、昭和十九年九月十五日から八十日余り壮絶な激戦の行われたペリリュー島を訪ねられ、日米双方の戦死者(遙拝されたアンガラル島も含めると、日本1万1896柱、米国4394名)たちに、慰霊の誠を捧げられたことは、まことに畏れ多く有り難い。

この行幸啓は、すでに二十年程前から希望しておられ、ようやく実現された由である。(本日発売の『文藝春秋』5月号掲載の前侍従長渡辺允氏と現代史家保阪正康氏の対談「天皇皇后両陛下『玉砕の島』にかけた二十年の祈り」参照)そのおかげで戦前・戦中・戦後の百年近い日パ関係の実情が広く知られるに至った。

この機会に私も認識を新たにしたことが多く、新聞・テレビの取材に可能な限り応じた。その一つ『東京新聞』九日朝刊に「お言葉」全文とコメントが掲載されているので、添付して参考に供する。(添付資料は『東京新聞』九日朝刊pdf)

日章旗と似たパラオの月章旗
ところで、パラオ共和国は、大正九年(1920)から二十数年に亘る日本(南洋庁)の統治後、1947(昭和二十二)年からアメリカの統治下にあったが、紆余曲折を経て1994(平成六)年ようやく独立を達成した。

その過程で、1980(昭和五十五)年に制定されたパラオ国旗は、海を表す青色の地に月を表す黄色の丸が描かれている。これは「日章旗」によく似た「月章旗」といってよい。(バングラデシュの国旗は緑色の地に赤色の丸)
ただ、これが日章旗をモデルにして作られたかどうか、原案デザイナーのジョン・スキーポング氏も、初代大統領のクニオ・ナカムラ氏(三重県出身二世)も、明言していない。しかしながら、昨年末に来日した現大統領トミー・レメンゲサウ氏も、一昨年まで駐日パラオ大使だったミノル・ウエキ氏(共に日系人)も、今回テレビ取材に「これは日本の国旗を参考にしたものです」と即答している。

このようなところにも、パラオの人々の今なお極めて親日的な心情が、如実に示されている。それを可能にした先人たちに、あらためて感謝と敬意を表したい。

(両陛下五十七回ご結婚記念日の四月十日)

添付資料

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