穏やかな正月と思いきや、一月十四日発売の『週刊文春』(1月21日号)に、驚くべき記事が掲載された。「12月23日天皇誕生日の夜に〝お呼び出し〟/美智子さまが雅子さまを叱った!」/宮中スクープ」といういう大見出しの六ページに亘る特ダネである。
けれども、一読して不可解な矛盾が目立つ。皇居吹上の御所で御身内のみにより催された祝宴・歓談の直後「皇后陛下と雅子さまは、別室に移られて、お二人だけでお話された」と日時・場所・対談者を特定し、「すべての事情を知る千代田関係者が、その顛末の詳細を証言する」という触れ込みで「インサイドレポート」を延々と書いている。しかし、こんなことは常識的にありえないであろう。
事実、宮内庁の対応をみると、十四日朝「大きな広告をご覧になった天皇陛下は、侍従長に対し・・・非常に驚かれ・・・(記事の)状況は全く起こり得ないことで・・・同席した全員が承知のはずだと仰せられ」、また「心配して東宮職に問い合わせた宮内庁長官に対し、皇太子殿下からも同様の主旨のお話があり」、さらに翌日「秋篠宮殿下からも、皇后陛下はこの夜終始一同の団らんの中にいらしたとのお話があり」、記事のような「状況が成り立つ余地は全くありません」との事実確認を、十五日付で公表している(宮内庁Hp掲載)。
また十五日、宮内庁の東宮職も、文春の記事が「全くの事実無根」であり、『週刊文春』編集部には、強く抗議するとともに、記事の即時撤回を求め」たと公表している(同前)。
このような二重の「厳重抗議」は、異例の事態として真剣に受けとめるのが当然であろう。ところが、その後の動きは、翌十六日、朝日新聞の朝刊で「週刊文春の記事について宮内庁が「事実無根」と厳重注意」という小見出し記事の末尾に「週刊文春編集部は取材に対し、〝記事には十分自信を持っています〟と文書で回答した」と報じた以外、ほとんど反応が見当たらない。昨日(二十一日)発売の文春(1月28日号)も全く知らん顔をしている。
そこで、やむなく私は、十六日出張の帰途、複数の宮内記者などに電話して事情を確かめ、翌十七日『週刊文春』編集部に厳しい表現のFAXをしたところ、十九日メールで丁重な返信があった。けれども、「我々は取材を尽くした上で執筆をしており・・・・捏造などではありません。」と弁明するのみで、具体的な質疑には何ら答えていない。
こんな状況を放置してよいはずがない。一般の人々でも正当な名誉は守られるが、国家・国民統合の象徴と仰がれる天皇および皇族の尊厳を守るには、政府なども的確な役割を迅速に果たしてもらいたい。
(HPかんせいPLAZA 一月二十二日 所功 記)