皇族女子は結婚後も家族一体で公務を
京都産業大学名誉教授 所 功
現在の皇室には、今年の二月二十三日で満六十二歳となられた今上陛下のもとに、十六名の方々がおられる。そのうち八十歳以上の高齢男女が五名、四十歳以下の未婚女子が五名おられるけれども、後者は今の制度が存続するならば、結婚の際に皇室を出るほかない。
そこで、昨年内閣府の有識者会議において議論を行い、皇族数を確保するための方策を纏(まと)めて、年末に報告書を提出した。その一つが、皇室(いわば本家の内廷と分家の宮家)の女子は、結婚後も皇族として残り、公務を分担し続けられるようにするという案である。
これは一応評価できる。とはいえ、その実現は必ずしも容易なことではない。現存の未婚女子(内親王二名と女王三名)は、皇族として生まれ育ち、成年(二十歳)以後それぞれ公務に励んで来られたが、いずれ結婚すれば皇室の外へ出ることを前提に勉学も交友も続けてきたのに、今さら皇室に残るような方向転換を余儀なくされても困惑されよう。
しかし、法改正が行われたならば、該当する皇族女子は、皇室を守るために結婚後も皇室に残られる決断をされるであろう。その場合、有識者会議の試案では、夫も子も「皇族という特別の身分を有しないものとする」としている。
けれども、それでは皇族身分にある妻と、一般国民のままの夫とその子たちが同居することになり、一体的な家族関係を営むことが難しい。その点は、夫も子たちも皇族として一緒に公務を果たせるようにすべきであろう。
そうすると、皇室典範の改正によって「男系の男子」だけでなく、「男系の女子」にも認められやすくなる。もし二代先に男子を得られなければ、皇族女子を天皇に立てる可能性が生ずる。
ところが、仮にそうなれば、女性天皇の子が男女を問わず、いわゆる女系天皇として立てられる道も拓かれる。それを見越して、絶対反対を唱える論者も少なくない。
とはいえ、明治以前の先例には、「皇統」を、ことさら男系・女系に分けたり、男系(父系)を原理とし、女系(母系)を否定するような例は、ほとんど見あたらない。
古来格別な立場の天皇の地位は、皇祖皇宗の子孫と伝えられる「皇統に属する皇族」が継承することこそ、不可欠の要件と考えられる。 (『歴史研究』令和4年3月号掲載)