敬宮さま「ご成年」会見に関する所感



所  功

「敬宮(としのみや)さま」と称するのは

平成十三年(二〇〇一)十二月一日に誕生された敬宮愛子内親王は、昨年十二月一日満二十歳の「ご成年」を迎えられましたこと、国民の一人として心からお慶び申し上げます。

それから三ヶ月半後、学習院大学も春休みに入った今月十七日、皇居吹上御所大広間で「ご成年をお迎えになっての記者会見」に臨まれ、見事に大役を果たされました。その全容は、テレビも新聞も精しく報じており、宮内庁のホームページには和英両文が掲載されています。

当日この御会見について内外の紙誌からコメントを求められましたが、十日後の本日、ここにあらためて所感を記しておきます。なお、一般に「愛子さま」と報じていますが、お誕生七日目、祖父の天皇陛下から賜った称号は「敬宮」、御名は「愛子」、その身位は「内親王」、敬称は「殿下」ですから、正式には「敬宮愛子内親王殿下」と申すべきところ、平易に「敬宮さま」と称することをご容赦願います。

ちなみに、この称号と御名の出典は、『孟子』離婁下で、「孟子いはく、君子の人と異る所以は、その心を存するを以てなり。君子は仁を以て心に存し、礼を以て心を存す。仁者は人を愛し、礼ある者は人を敬す。人を愛する者は人恒に之を愛す。人を敬する者は人恒に之を敬す。……」とある中から「敬」と「愛」の好字を選び出されたのです。この「敬」をトシと訓むのは、敬の本義が人の警(いましめ)を受け容れて慎むことであり、その素直な理解が鋭敏なこと(とし)を意味するからだとみられます(白川静氏『字訓』など参照)。

 「皇族の一員としての自覚」ご体得

三月十七日の御会見は、あらかじめ宮内記者会から出された五つの質問と関連する三つの質問に、約三〇分かけて笑顔で誠実に応答されました。その明るい爽かさが、多くの人々の心に快く響いたようです。

まず問一のお答えで、年末年始から宮中の儀式や祭祀に参列され「自分が成年皇族の一員であるという自覚が芽生え、個々の行事に責任感を持って臨まなければならないと感じた」「少しでも両陛下や他の皇族方のお力になれますよう、私のできる限り、精一杯務めさせていただきたい」と穏やかに決意を述べておられます。

ついで問三のお答えに、「両親と話をしておりますと、豊富な知識や経験に驚かされ……両親の物事に対する考え方や、人との接し方などからは学ぶことが多く」、とりわけ「幼い頃から……国民に寄り添われる姿や、真摯に御公務に取り組まれるお姿を拝見しながら育ちました」ので、「上皇陛下が折に触れておっしゃっていて、天皇陛下にも受け継がれている、皇室は、国民の幸福を常に願い、国民と苦楽を共にしながら務めを果たす、ということが基本であり、最も大切にすべき精神であると、私は認識しております」と御両親や御祖父母から身近に学びえたことを語っておられます。

また「皇室の皆様は……それぞれに専門とされるような分野をお持ちで……その深い知識を公的なお仕事にも役立てられている」意義を知り、「行事の際などに……皆様の御所作や立ち居振る舞いをお側で拝見し、そのなさりようをお手本とさせていただきながら、少しでも皆様に近づくことができますよう、努力したい」と、謙虚に述べておられます。

このように敬宮さまは、皇室のなかでも特に内廷(いわば本家)に生まれ育たれた皇女だからこそ、おのずから学び取られることが多くあり、また他の宮家(いわば分家)の方々からも、何に力を入れ心がけるかを、進んで見習おうとしておられることが、よくわかります。

「両陛下からのアドバイス」の実践

さらに関連質問へのお答えで、今回の会見に先立って「父から聞きましたのは、聞いてくださっている皆さんの顔、お一人お一人の顔を見ながら、目を合わせつつ、自分の伝えようという気持ちを持って話していくというのがコツだというふうに……教えていただきました」と内幕を明かしておられます。

これは単なる話術でなく重要な心得です。実は昭和二十五年(一九五〇)四月、東宮御教育参与の小泉信三博士(62歳)が、当時学習院高等科二年生の皇太子継宮明仁親王(16歳)への「御進講覚書」(慶応大学出版会刊『小泉信三アルバム』所収)の末尾で「注意すべき行儀作法」の一つとして「人の顔を見て話を聴くこと。人の顔を見て物を言うこと」をあげておられます。

それを学ばれた平成の天皇(現上皇)陛下は、国内外の要人にも被災地などの人々にも、相手の顔を見て話を聴かれ、相手の顔を見ながらお言葉をかけてこられました。敬宮さまは、そのようなお心がけを承って今回実践されましたが、それを今後とも実践し続けられることにより、まさしく自ら人を愛して人々から敬われる内廷皇女として、大きな役割を果たされるにちがいないと信じております。

(令和四年三月二十七日稿)

宮内庁ホームページ「愛子内親王殿下ご成年をお迎えになっての記者会見」

https://www.kunaicho.go.jp/activity/activity/02/activity02-r040317.html

所功「敬宮さま「ご成年」会見に関する所感」

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