「生前退位」問題に関する所 功のインタビュー記事



「生前退位」問題について、主筆の所功のインタビューが掲載されました。

「生前退位 こう考える」 中日新聞 7月22日朝刊

◆典範に矛盾、直ちに議論を

天皇陛下のお悩みは、自ら形作ってきた象徴天皇像を今後も維持しなければという使命感でしょう。今はまだ元気だが、これから従来通りのことができなくなると見通され、身を引いて皇太子さまに代わってもらうしかないという結論に至られたのではないか。担い手としての悲鳴を感じます。

実情を知った以上、政府も国会も国民も「何とかせねば」と受け止めるのが当然です。ほとんどの国民が象徴天皇を支持しているならば、その存続を可能にするシステムに手直しする必要があります。

現在の皇室典範は、明治の旧典範同様、生前退位を認めていません。戦後の昭和二十二(一九四七)年早々に新たな典範を制定した際も、連合国軍総司令部(GHQ)はあまり介入しなかった。しかし、旧典範以来残された問題点は昭和二十七(一九五二)年の独立回復時に見直すべきだったと思います。

その後、当時は予測できなかった事態が次々と起きています。そこで小泉内閣の時の平成十七(二〇〇五)年、皇室典範に関する有識者会議が女性・女系天皇について議論しました。しかし、秋篠宮家に悠仁さまが生まれたことで、皇室典範見直しの動きは止まっています。

法というものは、時代とともに変えていかなければ現実と乖離(かいり)し、矛盾をきたします。それを七十年間も放置し、機能不全を招いた。それが今回の問題の真相だろうと思います。

生前退位については、皇室会議で議論して案をまとめたらよいと思います。議員の構成は皇族二人、衆参両院の正副議長、首相と宮内庁長官、最高裁長官と裁判官の計十人ですから、皇室に関する問題で皇室側の意見と国民の意見を合議できます。

皇位継承を定める皇室典範の第四条を「天皇が崩じた時、または皇室会議の議を経て退位した時は、皇嗣(こうし)が直ちに即位する」と改め、退位の要件を慎重に吟味する。

一方で、直ちに典範の改正が難しければ、当面陛下のご意思を実現するため今回の生前退位を可能にする特別法をつくるという二段構えとなるかもしれません。

憲法は終身在位を前提にしていますが、明文で生前退位を禁じているわけではありません。問題は、終身在位を制度化している皇室典範を見直さないと象徴天皇の役割を維持できないことで、いわば目的のための方法を修正するにすぎません。

もし天皇陛下の退位が実現した場合、新しい天皇は、皇室の役割を仕分けされたらよい。憲法上の国事行為と伝統的な宮中祭祀(さいし)は天皇ご自身が主宰されなければなりませんが、それ以外の公的行為は恒例の行幸や国賓の歓待など以外、他の皇族方に分担してもらわれてよいと思われます。

今のままでは憲法上の制度があっても、実態の機能を維持できなくなると痛感された当事者が実情を示された。大事なことは、それを国民が真剣に受け止めなければいけないということです。 (聞き手・小松田健一、原田晋也)

このほか、

『東京新聞』7月21日・22日朝刊

『週刊朝日』7月29日号にインタビュー(添付資料)

『週刊ポスト』8月5日号に漫画家・小林よしのり氏との対談が掲載されています。(http://www.news-postseven.com/archives/20160725_432414.html NEWSポストセブン に一部掲載)

添付資料

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