新著の執筆と校正の裏話 (付、正誤表)



  新著の執筆と校正の裏話  (正誤表は添付資料を開く)

(かんせいPLAZA主筆) 所  功
   八十歳代の取り組み
昨年春、モラロジー研究所も定年退職して、原則毎日、小田原の自宅で自由に過ごせるようになった。ただ、四年前に姉女房が脳梗塞と大腸癌で発語も外出も困難になったので、そのケア・サポートが案外時間を要する。
とはいえ、従来食事の後片付け以外やったことのない私が、料理や洗濯を家内の指示に従って手伝うのも、彼女の好きなテレビ番組や音楽を視聴するのも、葉書絵に描く草花などを図鑑やネットで探すのも、結構楽しい。
その一方で、八十歳代に入ってからも、やり残したこと、新たにやってみたいことなどが、次々と頭に浮かぶ。それは自分だけで出来ることも少なくないが、むしろ知友の支援を得なければ出来ないことが多い。
後者の最たるものは、『未刊論考デジタル集成』(DVDーROM)の編集・出版である。その第一期分(①②③)は、道徳科学研究所助手の後藤真生君(京都産業大卒)が編集に全力を尽くし、一昨年(令和3年)12月、京都の方丈堂出版から刊行できた。また第二期分(④⑤⑥)は、京都産業大学准教授の久禮旦雄氏(京都宮廷文化研究所代表)が本務の合間に編集を進め、今秋10月刊行を目指し努力を続けている。
これ以外の取り組みは、日本学協会研究員の野木邦夫君(皇學館大卒)が入力してくれた『わが八十年の歩み』の追補「Ⅴ期、八十歳代の終活期」(別掲)に書き加えているので、参照して頂けたらありがたい。

   五ヶ月間の走り書き
さて、前者の自分だけで出来ると思えることは、学んだことや考えることを論文・随筆として書くことである。しかし、それを発表できる場があるとは限らない。そこで、ぜひ書籍で出したいものは、費用の大半を自己負担する条件で引き受けてもらい、また折々の所感などは、故吉成勇氏(歴史研究会主幹)の負託に応えて、数年前から月刊『歴史研究』の巻頭随想「いま伝えたいこと」にフリーで連載している。
そのような私が、長らく関心を寄せ、今後のために懸念しているのは、皇室の歴史と法制である。それゆえ、一昨年大阪の国民会館(私も理事)で講述した『令和の皇室制度を建て直す』が昨年春冊子化されたので、数年前に同館で講述した冊子『日本国憲法「天皇」の再検討』とあわせて、修訂し単行本化することを考えた。
その案を十月早々、十年程前に市村真一博士(京都大学名誉教授)の論考集『皇室典範を改正しなければ宮家が無くなる』の出版を手伝った際に知己を得た藤原書店の社長に相談した。すると、「できれば皇室史の全体像と問題点を新たに解り易く書き下してほしい」、と熱心に勧められたので、敢えて引き受けることにした。
それ以来、全十章の構成目次に基づいて、400字詰原稿用紙に毎日数枚走り書きすると、推敲もせず直ちに編集部へFAXすることを、今年二月まで五ヶ月間繰り返した。八十歳代初めの執筆ペースとしては、これが限界であり、急ぎ過ぎだったかもしれない。
その際に困ったのは、蔵書の大部分を昨年春、道科研の「皇室関係資料文庫」へ寄贈したので、手もとに自分の既刊書と若干の資料類しかなく、前述のような家内事情もあって、記述根拠の確認作業を十分することができなかったことである。

   校正しながら執筆
その不十分な原稿の入力は、藤原書店の編集部が年末年始に多忙を極めて、大巾に遅れた。しかも、その初稿ゲラを校正しながら、かなり表現を修正したり新たにコラムや図表の説明なども書き加えた。その大直しに時間を要し、編集担当者Yさんなどに相当迷惑をかけた。
それにも拘わらず、この6月9日に天皇・皇后両陛下が大婚三十年を迎えられるので、奉祝の意味もこめて何とか六月中に出版したいと当初から考えていた。そこで、全体の再校データを久禮氏と野口剛氏(帝京大学教授)に送って助けを求めたところ、学年末・年度始めで多忙な中、丹念に校正して多数の誤植を指摘された、しかし、それを反映した修正ができているかどうかの最終点検を、私自身が行いえないまま五月末に到った。
その結果、6月9日に何とか刷り上がりができた。けれども、急いで読み返すと、重要な修正もれが十数カ所見付かった。
しかも、23日刊行された本書を先学・知友に献本したところ、汗青会同学の廣瀬重見氏(皇學館大卒)が早速綿密に通読して二十数カ所の誤記・誤植を知らせてくれられた。その労に感謝すると共に、とり急ぎ正誤表を作って野木氏に、またこの裏話を橋本秀雄氏(汗青会幹事)に入力を頼んで、ここに掲載させて頂くことにした。
この老歳では、何事も有縁の方々に助けてもらわなければ出来ないことを痛感している。
ただ今回のような不備を生じたことは、私自身の責任であり、読者にお詫びするほかない。もしさらに不適切な記述などに気付かれたら、ぜひお知らせ頂きたい。      令和5年(2023)6月30日記

連絡先(E-mail;12.tokoko.12@gmail.com)

 

添付資料

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