今上陛下の退位=譲位は当然「国の儀式」として



今上陛下の退位=譲位は当然「国の儀式」として

(かんせいPLAZA主筆) 所   功

政府の有識者会議(今井敬座長)は、四月二十一日、今上陛下の退位=皇太子殿下への譲位問題に関する最終報告書を公表した。昨秋以来、さまざまな意見に耳を傾けながら、その可能性を拓く道筋をつけられた関係各位に感謝を申し上げたい。これを参考に特別法案が作成されるという。

ただ、報告書を拝見すると、細部に若干の違和感がある。現段階で一つだけあげれば、ご譲位後の天皇を「太上天皇」の略称「上皇」と称するのであれば、前皇后も「皇太后」の略称「太后」と称するのがふさわしいと考えられる。

「太后」の用例は、すでに平安時代からあり、「上皇」の対称として二文字で揃う。それにも拘らず、報告書では「上皇」の「后」であるから「上皇后」という新造語を提案しているが、それならば「天皇」の「后」は「天皇后」となってしまう。皇室用語は可能な限り先例を活かして使うことが望ましく、特例法案の作成までに何とか再考して頂きたい。

 

今回の報告書には言及されていないことながら、もう一つ気になる報道がある。二十一日の読売新聞や二十三日の毎日新聞などによれば、「退位の儀式」は「国事行為としない方向で、政府が検討している」とか「内閣法制局が、天皇の国政関与を禁じた憲法第四条などとの整合性から(譲位儀式の)実施に否定的な見解を示している」という。

しかし、現行の憲法も皇室典範も、象徴天皇の終身在位を前提としているが、退位=譲位を否定したり禁止しているわけではない。だから今回それを特例法によって可能にするのである。その退位=譲位に関する儀式は、典範第二十四条「皇位の継承があったときは、即位の礼を行う」との規定により、皇位の継承に先立つ一連の儀式として、憲法第七条十項にいう「国事行為」の「儀式を行ふ」ことに該当すると解される。

ちなみに、終身在位の場合、皇位継承の儀式は、「剣璽等承継の儀」から始まり、昭和六十四年の一月七日、それが「国の儀式」として行われた。従って、これからの生前退位=高齢譲位には、その剣璽を今上陛下から皇太子殿下へと御手渡しされるような承継のセレモニーが可能になる。それは当然、不離一体の「国の儀式」でなければならない。

なお、その際、今上陛下が譲位に関する御言葉を述べられることも、それに続いて皇太子殿下が践祚(皇位継承)への思いを述べられることも、共に憲法第四条の「国政に関する権能」と抵触するはずがない。また、その譲位と践祚の儀には、全国民を代表して三権などの要人が参列して、総理大臣から天皇(上皇)への感謝と皇太子(新天皇)への祝福を申し上げることも「国の儀式」の一環として行われることが望ましい。

(平成二十九年四月二十三日夕)

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