(26)皇室永続に多様な英知総合の秋



いま天皇・皇后両陛下は、共に満八十歳。幸いお健かで国家・国民のために誠心誠意お務め下さっている。そのおかげで日本は安定し全国民が安心しておれるのであろう。

ただ、このような天皇を代表とする皇室の在り方が、今後とも末永く続くかどうかについては、不安な要素が次第に深刻化している。そこで、二十年程前から皇太子殿下の〝お世継ぎ〟問題を中心に、さまざまな議論が行われてきた。

その経緯を振り返ってみると、議論に参加した大多数の方々は、皇室の永続を念願し切望する点で、大目標が一致しているにちがいない。けれども、マスコミ的な〝男系派女系派〟といった二者択一的極論が広がり、国民的な合意の形成を難しくしている。

そんな折から、先月五日、高円宮家の次女典子さまが出雲大社宮司嫡男の千家国麿氏との御結婚を機に、「皇室典範」第十二条に従い「皇室の身分を離れる」こととなった。今後、未婚の皇族女子(内親王三方、女王四方)が、同様に一般男子と結婚され続けたら、傍系の三笠宮・高円宮両家も、直系の皇太子・秋篠宮両家すら消滅してしまう状況にある。

それに対して、㋑皇室を出た元内親王・女王にも何らかの尊称を認め、皇族に準ずる公的な活動をして頂く、という案が野田内閣の時に提唱された。最近(十月二十日)の産経新聞朝刊では、これに近い案を「政府方針」として「閣議決定」するという。

また、㋺皇位だけでなく宮家の継承も「男系の男子」を貫くため「旧宮家の男子を皇族に迎えよ」という主張(産経新聞十月三十日月刊「正論」)が、十数年前から繰り返されている。この「男子」は、被占領下で臣籍降下を余儀なくされた旧皇族(現存者少なく高齢)よりも、一般国民として生まれ育った子孫の方々であろう。

このような両案は、本質的に好ましいと思えないが、現実的な解決案として妥当な方法が示されたら納得できるかもしれない。まず㋑でも、政府が閣議決定するのでなく、皇族代表と三権代表から成る「皇室会議」で慎重に検討する必要があろう。まして㋺は、現行憲法下で特別措置法を作るにせよ、適任者を確保できるか否か、厳密に精査して頂きたい。

最後に、現在の管見を端的に申せば、根本的な皇位継承者は、三代先まで「男系の男子」がおられるから、この原則は変更しないことを前提とした上で、①皇族女子の減少を止めるには、直系の三内親王と傍系の宮家代表の二女王を当主とする宮家を認めると共に、②明治天皇の四皇女が降嫁された竹田・北白川・朝香・東久邇の四家および香淳皇后出身の久邇宮家に関しては、今上陛下(現在の皇室)とご血縁の近い特別な旧宮家として、その子孫でも適任者がおられたら、継嗣のない常陸宮家などを継ぎうるように、皇族の養子を認めることが、本質的で現実的な在り方だと考えている。

このような①②案も前述の㋑㋺案も、皇室永続という大目標に向けて、互いに長所を活かし短所を補い総合的な解決策の実現を目指したい。それこそ、陛下のご軫念を少しでも安んじ奉る道だと思われる。

(10月31日)

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