数年前から進めてきた共同研究の成果を、最近ようやく公刊することができた。それは、「大化」から「平成」まで千三百年以上にわたり、日本で独自に作り全国で使われてきた247の公年号に関する多彩な研究を集約した『日本年号史大事典』(A5判808頁、雄山閣)である。
私は学部の卒論で「延喜」改元(901年)を提唱した文人官吏・三善清行の伝記研究に取り組んで以来、年号制度史に関心をもち、昭和52年『日本の年号』という概説通史、同63年『年号の歴史』という論文集成を著した(共に雄山閣)。しかし、全年号の総合研究は不可能に近い、と思っていたところ、意外な協力者が次々と現れた。
その一人は、私が京都産業大学の日本文化研究所で始めた「後桜町女帝宸記研究会」に参加してくれた吉野健一氏であり、彼は京大の修論以来、近世の年号研究をテーマとしている。もう一人は、私が同志社大学の文学研究科へ出講中に受講していた久禮旦雄氏であり、彼は京産大で私の担当した講義の一つを引き継いでいる。そこで、この二人と何度も協議を重ねて構想を練り、総論は私、各論は両氏が執筆することでスタートした。
しかし、年号史上、一番難しいのが南北朝時代の両立年号である。また、年号の本家は中国であり、その周辺諸国でも断続的に年号を作り私的に使ってきたから、それも対比する必要がある。そこで、かつて『皇室事典』(角川学芸出版、平成21年刊)の編集に協力してもらった数人のうち、京都造形芸術大学の五島邦治氏に前者を、モラロジー研究所の橋本富太郎氏に後者の年表作成を依頼して、何とか今春ゴールインすることができた。本書の評価は、それを活用される方々に委ねるほかないが、私自身は若い有能な研究者の全面的な協力により長年の夢を叶えられたことに深く感謝している。