(55) 相模国の一宮・二宮・三宮めぐり



神奈川県の小田原市国府津(こうづ)に転居して三年九ヶ月経った。生まれてから七十年住んだ岐阜県の揖斐川町も本当に良い所である(毎年ふるさと納税の返礼に贈られるイビ米やイビ茶など、殊のほか美味しい)が、当地は冬でも比較的暖かいのが、高齢者にはありがたい。

この神奈川県へ来た以上、旧相模国の主な神社へ参りたいと願いながら、小田原と鎌倉・横浜の三市以外なかなか行けない。と思っていたところ、近所に住む娘婿が昨夜「明日どこかへ出かけませんか」と誘ってくれたので、本日午後、彼の車で一宮・二宮・三宮めぐりをしてきた。

まず中郡二宮町の川匂(かわわ)神社。国道一号線から少し入った山西にある。『延喜式』神名帳に登載される相模十三社の一つで、古くから二宮大明神とも称される。大化前代から磯長(しなが)国の中心地で、大名貴命(大国主神、国土開拓の守護神)以下五柱を祀る。入口に立派な随神門、境内に神楽殿などがある。

ついで伊勢原市三之宮の比々多(ひびた)神社。国道二四六号線の比々多から少し入った所にある。延喜式内社で、古くより「冠大明神」とも称され、豊斟野尊(とよくむぬのみこと、国土創造の独り神)以下六柱を祀る。

当社の境内から、縄文早期の尖底土器や、中期の顔面把手をはじめ、弥生時代から古墳時代の土器・鏡・玉など(近くの栗原古墳から環頭太刀など)が出土し、飛鳥時代の鶉瓶(うずらみか)や狛犬(木製一対)も所蔵する。
さらに高座郡寒川町の寒川神社。JR相模線の宮山駅近くにある。

延喜式内社で相模国唯一の名神大社。寒川比古命・寒川比女命(関東地方の開拓神)を祀り、当国の一宮、関八州の総鎮守とも称され、八方除(はっぽうよけ)の守護神として壮大な社殿・神門を構える。

当社は近年いわゆるパワースポットとしても注目度が高い。それは、当社からほぼ真西に富士山が見え(その延長線上に伊吹山・出雲大社があるという)、春分と秋分には霊峰富士(夏至には大山)の頂上に日の沈む聖線(レイライン)の結び目にあるという。冬至から十日後の今日は、夕方四時半ころ、相模川の橋際から西方の少し右手に薄紅色の富士山、正面(箱根山の方角)に美しい日没を拝むことができた。

その後、平塚市四之宮の前鳥(さきとり)神社(四宮)および同市浅間町の平塚八幡宮(五宮)に寄ることも考えたが、それは来年の楽しみとして静かな海を見ながら帰途についた。なお、中郡大磯町の「国府本郷」にある六所(ろくしょ)神社は、相模国の総社で、出雲系の大国主命・素戔嗚尊・櫛稲田姫命を祀る。

かつて律令時代の国司は、都から当国へ赴任すると国内の主要な一宮以下の神社を巡拝したが、やがて国府近くで国内の諸神を合祀する総社に参拝した。その遺風として、当社では、今なお毎年五月五日、一宮・二宮・三宮・四宮・五宮の神輿(みこし)が集まって「相模国府祭」(さがみこうまつり)が行われる。それを三宮の社頭で頂戴した「相模国六社めぐり御朱印帳」(冊子)で初めて知った。これにも家族づれでお詣りしたい。

(かんせいPLAZA、平成27年12月29日夜 所功 記)

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