典範改正に必要な皇室の意向確認



典範改正に必要な皇室の意向確認
(京都産業大学名誉教授) 所  功

戦後の皇室典範は、制定から数十年経つ間に高齢化・少子化が著しく進んだ皇室の現状に適合しなくなった。それにもかかわらず、この法律の改正は難しい。
なぜなら、皇室を担う天皇は(皇族も)、憲法で「国政に関する権能を有しない」とされ、ご自身(各皇族)に関する制度の見直しを提起することができず、「主権の有する日本国民の総意」を負託される政府・国会の発案と合議によるほかないからである。

先帝のご意向に沿った譲位の実現

とはいえ、国家・国民のために「象徴としてのお務め」を全身全霊で果たしてこられた平成の天皇は、古稀の前に前立腺癌や心臓冠動脈の手術をして将来に不安を覚えられ、宮内庁の「参与会議」で「退位」の意向を強く示された。
しかも、なかなか埒が開かないので、平成二十八年(二〇一六)八月、天皇(82歳)はビデオ・メッセージにより、象徴の務めを末永く受け継いでほしい、という高齢譲位のご意向を直接国民に語られた。
それをテレビなどで知った国民の大多数は、素直に理解と共感を示した。そこで、政府も国会も本気で動き出し、翌年九月、「高齢化」を理由として「退位」を容認する「皇室典範特例法」を成立させた。それに基づいて翌々年(令和元年)四月末に天皇(85歳)の譲位が実現されたのである。

新設宮家案も養子皇族案も事前諒承必要

あれから満五年後(令和六年)の現在、もう一つの少子化=皇族数の減少という課題の解決に向けて、有識者会議の報告に沿った典範の改正案が、まもなく国会で論議されるという。それは大筋結構だと思われるが、与野党の合意を急ぐあまり、最も大事なことが置き去りにされている。
それは皇室(天皇と皇族たち)のご意向を事前に確認することである。与野党の多数意見では、①皇族女子が結婚後も皇族として宮家を立てる場合、その夫も子たちも皇族にしないという。また②いわゆる旧宮家の子孫を現宮家に養子とする場合、常陸宮家に限るのか、三笠宮家も高円宮家を含めるのか、まだハッキリしない。
しかし、この両案を皇室の方々は、当事者としてどう思われるだろうか。①ならば、新宮家は宮家当主のみが皇族で夫と子たちは一般身分のまま、という不自然な構成になるが、それでよいのか。また②ならば、現宮家の方々は本当に養子を必要とし希望されるのか否か。ぜひ承りたい。
それゆえ、改正法案を作成する前に、せめて皇室会議(議員十名)を開き、皇族代表の議員二名から皇室内の一致したご意向を伺う必要があろう。皇室会議は議長の首相と議員の見識により、このような意向確認ができるならば、早急に実施して頂きたい。                    (令和六年四月十日記)

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