政府案による近未来の皇族像への不安



政府案による近未来の皇室像への不安
(京都産業大学名誉教授) 所  功
平成の天皇が満八十五歳で令和の今上陛下に譲位されてから、まもなく満五年になる。折しも政府と国会で、皇室に関する「先送りできない課題」の一つに取り組み始めた。
最近の報道によれば、「皇族数を確保するため」の政府案は、国会の与野党で各々検討の上、大筋で賛成をえたら議案化する状態にあるという。
では、もし現段階の案で皇室典範の特例法が制定されるならば、近未来の皇室像はどうなるのだろうか。こんなことをあれこれ想定することは、謹むべきかもしれないが、もし法案の改善に役立つならばと念じている。

皇族女子が婚姻後も皇室に留まる場合
政府案の㈠では、皇族女子が婚姻しても皇族の身分を保持して公務を分担しうるようにするが、その夫と子は皇族としない(一般国民のまま)、という。
これを現在の皇室にあてはめれば(年齢は今年四月現在)、もし皇族女子を「内親王」に限ると、今上陛下(64歳)長女の敬宮愛子内親王(22歳)と皇嗣秋篠宮殿下(58歳)次女の佳子内親王(29歳)のみである。この両殿下が近い将来、一般男性と結婚されても、その新設宮家は当代限りで皇族不在(絶家)となってしまう。
そこで、皇族女子を「女王」まで広げれば、三笠宮家の彬子女王(42歳)と瑤子女王(40歳)、および高円宮家の承子女王(37歳)の三殿下が増える。しかしながら、結婚されても(されなくても)、前者と同様、当代限りで皇族不在(絶家)とならざるをえない。
しかも、新設宮家の当主のみは皇族の待遇を受けられるが、同居する夫と子たちは一般国民のままであれば、皇族費を支給されず、公務に同伴しても、他の宮内庁職員並の手当しかない、などという不自然な状況が続くことになろう。そのような方が一般国民としての権利と自由を行使されても、法的に抑止することは難しいであろう。

旧宮家男子孫を養子皇族とする場合
政府案の㈡では、昭和二十二年(一九四七)皇籍を離れさせられた旧宮家皇族の男子孫を、現在宮家で継承者のない所へ養子として入れ皇族の身分にする、という。
しかし、いわゆる旧宮家も大半が後継男子不在のため絶家となっている。男子孫が実在する家でも、皇室の養子となることを当家・当人が諒解されるか否か、微妙で難しい。
また、もし後に適任の該当者が得られましても、皇室の方で養子を必要とし希望されるか否か、当然確認すべきことながら、その手続きまで明文化できるのだろうか。
従って、あくまで仮定にすぎないが、現存の宮家で後継の御子様が居られないのは常陸宮家(当主正仁親王88歳)のみである。そこに養子として旧宮家の既婚夫妻が入るにせよ、未婚の男子が入って一般女子と結婚するにせよ、その間に生まれる男子に皇位継承資格を認めることが妥当か否か、慎重な検討を要する。
なお、現在の宮家で男子不在の三笠宮家と高円宮家に、未婚女子が居られるのだから、旧宮家の男子孫を養子として(または女王の夫として)受け容れられることなど、おそらく無理ではないか。とすれば。この㈡案は、画餅に終わる恐れがあろう。これを推進する人々は、近未来に思いを致し、ぜひ考え直して頂きたい。
(令和六年四月二十一日記)

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