あれから三十年、記憶を記録にする意味
京都産業大学名誉教授 所 功
「震災は忘れた頃にやって来る」と語っていたと伝えられる寺田寅彦は、大正十二年(一九二三)九月一日に起きた「関東大震災」の実態を日記に詳しく記している(全集七所収)。 それと較ぶべくもないが、私は三十年前(平成七年一月十七日)起きた「阪神淡路大震災」について簡単なメモ以外、ほとんど何ら記していないことを反省して、十四年前の「東日本大震災」後まもなく、記憶を頼りに身近な見聞録を作った。
これは私的な備忘録にすぎないが、母の六十数年に亘る日記と共に、ひょっとして子孫のために役立つかもしれない、と思うと安直に処分し難い。
また、自歴年譜として、三年前に作成した「わが八十年の歩み」に続く、「傘寿から三年の歩み」を増補した。これは未定稿であるが、同時代の主な出来事と有縁の人々との関係を伝える記録として、このHpに掲載する。