譲位=践祚の儀式と新元号の公布・施行



  所  功

「新元号 平成31年元日から」という特報

今上陛下が数年以上前から熟慮し決意された「高齢譲位」の問題は、政府が九月に立ち上げた有識者会議で検討されつゝある。

ところが、1月10日(火)産経新聞が一面で「新元号 平成31年元日から/皇室会議経て閣議決定へ」という大見出しのもと、「政府は、平成31(2019)年1月1日(元日)に皇太子さまの天皇即位に伴う儀式を行い、同日から新元号とする方向で検討に入った。…」という特報を打った。しかも翌11日(水)朝日・毎日・読売・日経の各紙も、「政府」の情報と明示して、同一趣旨の記事をトップ扱いで報じている。

しかし、これはおかしい、重要な祭祀・儀式の続く元日に皇位継承という最も重大な儀式まで行えるはずがないと考えて、会う人ごとに異議を述べた。けれども、全国紙が報じた影響力は大きく、政府の方針は内定ずみと思い込んでいる方が多く、そら恐ろしさを感じた。

皇位継承の儀式を経て新元号の施行

ここにいう「政府」というのは誰なのか判らないが、その情報は不自然であり不適切だと言わざるをえない。

まず政府としては、有識者会議の検討した内容の報告を待ってから具体的な取り組みに入るべきであろう。また元号は、皇位の継承が確定してから決めるべきものである。

昭和54年(1979)制定の「元号法」にも、元号は政府が政令で「皇位の継承があった場合に限り改める」と明記されている。従って、これから特別措置法の制定か皇室典範の改正により「高齢譲位」が可能となる場合、その譲位年月日が早めに内定すれば、改元の準備を早くから進めることはできようが、その正式決定は、皇位継承の儀式を経て公表される。ただ、その施行日時は公布より後でも構わない。

晴れやかな譲位=践祚の儀式の工夫

そこで、これからの皇位継承に伴う儀式を試みに考えてみると、最も重要なのは、皇位のシンボルとされる「剣・璽(勾玉)」と公務に使用される御璽(金印)の授受である。これが前回は、昭和天皇の崩御から四時間後、侍従により御所から宮殿に運ばれ、皇太子=新天皇の御前に置く「剣璽等承継の儀」(国の儀式)として行われた。けれども次回は、お元気な今上陛下からお若い皇太子殿下へと手渡されるような形をとられるのではないかと思われる。

その際、前回よりも多くの成年皇族と三権代表者などが立ち会い、現天皇と新天皇から「お言葉」があり、国民代表の総理大臣から現天皇への感謝と新天皇への祝意を奏することも考えられる。

さらに、譲位された上皇陛下と皇太后陛下、践祚された新天皇陛下と新皇后陛下、および秋篠宮殿下・同妃殿下が、長和殿のベランダに並ばれて、参集する一般国民の祝賀を受けられるようなことも工夫して頂きたい(念のため、国内・海外の代表者を招いて行われる「即位礼」には、相当な準備を要するから、早くてもその春か夏になろう。また、より長期の諸準備をしなければならない大嘗祭は、その秋11月となるにちがいない)。

平成31年1月8日の即位改元が最適

さて、そのような皇位継承時の儀式は、いつ執り行われることが望ましいか。これは近刊拙著『象徴天皇「高齢譲位」の真相』(ベスト新書)にも記したとおり、今上陛下は平成31年1月7日で満30年在位されたことになるので、元旦の四方拝から7日の昭和天皇三十年祭、あるいは10日ごろに行われる新年歌会始までは陛下ご自身がなされて有終の美を飾られ、翌8日あるいは小正月の15日に前述のような譲位・践祚の儀式を行われる。それによって新天皇のもとで、新元号が正式に決定公布され、翌日9日か16日の午前零時から施行するのが、最も良いと考えられる。

いずれにせよ、皇室の実情をふまえて、当事者・関係者も一般国民も、共に心から祝福できる在り方を検討する必要がある。

 

尚、本日(1月17日)午後、宮内庁の西村泰彦次長が記者会見で「一般論として言えば、1月1日というのは皇室にとって極めて重要な日だ。早朝から四方拝、歳旦祭の祭祀があり、国事行為として位置づけられている新年祝賀の儀が行われる。両陛下はこれらの大事な儀式や行事を終日、連続して心を込めてお務めになっている。従って1月1日に譲位、即位に関する行事を設定するのは、実際にはなかなか難しいのではないか、と私どもは考えている」(朝日新聞デジタル、2017年1月17日22時31分更新)と話された由、まことに当然であろう。政府も国会も、しっかり考えてほしい。

参考までに、宮内庁のホームページにより今年元日から1週間の「両陛下のご活動」と、「今上陛下の即位・大礼の日程」を別表に抄出した(添付資料)ので、ご覧頂きたい。

(平成29年1月17日夕・18日夕補・21日夜再補)

添付資料

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